「本当の自分」とは何か?、「分人」という考え方【平野啓一郎『空白を満たしなさい』】
「本当の私はこんな性格ではない」と悩んでいませんか?
「あの人は人によって態度が変わるよね」と思っていませんか?
今回は、平野啓一郎さんの『空白を満たしなさい』という本について感想などを書いていきたいと思います。
目次
あらすじ
妻子を持つ土屋徹生、あるとき彼は自分が死んで生き返ったことを知ります。
しかし彼には死んだ記憶がなく、「なぜ自分は死んだのか?」「自殺は考えられない」「誰に殺されたのか?」という疑問に悩まされ、その真相を探していく物語です。
「分人」とは?
この物語の中でも出てくる、平野啓一郎さんが提唱する思想の一つです。
「自分」の中にはいくつもの顔を持った自分がいて、人は自然とその顔を使い分けているという考え方です。
この小説では、
「個人」に対して「分人」、個人が整数なら分人は分数
というような表現をしています。
自分はひとつしかない、自分には「本当の自分」がいる
ではなく、
自分の中にはいろいろな人格を持った自分がいて、それは接する人や場所などによって変化していく。そしてそれは自然とそうなってしまうもの。
「分人」という考えについて
この考えを知ったとき、いろいろスッキリすると同時にどこか救われた部分がありました。
自分のダメなところや嫌なところもありますが、それも自分の数多くある分人の中の一人であって、必ずしも自分そのものを全否定するものではないのだと思えました。
親や友達、会社の人など、いろいろな人によってその都度、自分がいろいろ変わってしまうのも、それは自然なことであって、それでいいのだと自分をどこか許せるようにもなりました。
本の感想
内容が結構重たいですが、だからと言って読みづらいと感じさせず、スラスラと読むことができました。
「自分」について、「死」について、「人の弱さ」について考えさせられる本でした。この本と出会ってよかったです。
書評、難しいです...。